「みなさん聞いてください、このデイキャンプを開いた理由は3つあります」主催の町役場山下さんからお話がある。
災害が起こった時でも慌てず、生活していくためのワザの実践。
森と川の魅力を体験できる新しい公園作りのヒントを探す。
そして、みんなが野外の遊びを通じて新しい遊びを発見していくこと。
神妙な面持ちで聞く子ども達、大人も照れながら自己紹介をしたら、いよいよスタート。

今回は、スウェーデントーチ、焚火でご飯を炊くのがメインイベント。
日ごろ使うことのない火の扱い方、刃物の安全な使い方なども野外で体験しながら、空中テントとスラックラインなど、アクティビティ満載の一日になりそう。

女川の木立の中に突如現れた空中に浮かぶラピュタ?いえいえ、これが噂の空中テント。
木立の中に空中テントを設営。足場が悪くても、このテントは3本のベルトで木々の間に固定することで宙に浮いた状態になるため、足場が悪くても前日に雨が降っても、床が濡れずに設営できるカッコいいテントだ。
子ども達はさっそく中で跳んだり跳ねたり、もう夢中。
不思議な浮遊感が楽しそう。これは、大人も体験してみないと、もったいない。

空中テントの隣には、スラックラインを設置。
二点間に張り渡した専用のベルト上を飛んだり跳ねたりする新しいスポーツで、ヨーロッパやアメリカで盛り上がりを見せている。
女川では伊藤さんが、復幸祭にもプロを招いたり一生懸命魅力を伝えてくれる。
見た目は簡単なようで、実は難しい。
でも手軽にバランス感覚や体幹が鍛えられる。
大人はそうはいかないが、子どもたちはあっという間に上達だ。

焚火の炉を組み、火起こしの準備。焚付けを集めるチームは、小枝とともに乾いた杉の落ち葉を拾う。
これを焚付けにしたら、すぐに火が点いた。お、簡単!!

河原の石と落ち葉と枯れ枝で、火を起こす体験。
身の周りにあるものを組み合せて、必要なものを創りだす。子ども達の目にはどう映っただろう。

点いた種火には薪をくべる。
その薪も自分達で作る。山の間伐材を鉈と斧でどんどん薪にしていく。結構体力がいるこの作業も、みんなでやれば楽しいアウトドア体験。
恐る恐る火をくべる子どもも徐々に楽しそうな顔になっていく。
やっぱり炊き火は大人も子どもも魅力的。

テント張りも、この機会に。
一度体験しておくと、いざという時に慌てなくても済む。
最近のテントは簡単に張れるようになっているので、ものの5分で組み上がる。
格好の秘密基地ができて、嬉しそうな子ども達。

準備が整ったところで、野外料理にとりかかろう。
ガッチャンポンプから汲み出した井戸水を大鍋に入れる。

焚火炉では、工事用鉄杭を板線針金で留めるだけで、鍋を焚火にかけるための三脚ができあがっていた。
こんな道具も、手近なものから何でも作れる。工夫次第だと感心しきり。

「はじめちょろちょろなかパッパ。赤子泣いても蓋とるな」の格言どおり、沸騰するまで待って火から降ろす。
しばらく蒸らしてから蓋を開けると、そこにはおこげ付の鍋ご飯が。
竹を割って作った即席のお皿によそってみる。香ばしいご飯の味が口いっぱいに広がる。

女川の新しい野外コンテンツになりそうな、間伐材から作ったログトーチ。
スウェーデン・トーチとも呼ばれているもので、チェーンソーさえあれば、簡単に作ることができる。
枯れた杉っ葉を真ん中に詰めて、マッチかライターで火を点ければ、拍子抜けするくらいあっという間に本体に火が移る。
本当にお手軽な燃料兼調理台だ。
これが一家に一台あれば、停電になっても一晩しのぐことができそう。
火が点いた後も、ヤカンや鍋・五徳を上に置くことができるので、とても便利で使いやすい。

火が点いたら、直火でソーセージ・厚切りベーコンを炙り始めよう!
肉の脂が浮いてきて、じゅうじゅうするのが見える。この様子を見ているのは、無条件に楽しい時間だ。
長芋にミニトマトやキノコ類も。女川名物蒲鉾ももちろん外せない。めいめいが、食べたいものを組み合せて串に刺して焼く。
お母さんたちのカバンからは、漬物や佃煮、テリーヌまで。女川は号令をかけなくてもご飯が進む美味いものが集まってくる!!

器は竹筒を作る。
自分でノコギリを使って、竹を輪切りに切ってみる。
何でも一度体験しておけば、きっと何かの役に立つだろう。
一節分を残して切った竹筒に、米と水を入れる。
アルミホイルで蓋をしたら、焚火に放り込む。
竹筒ご飯、おいしく炊けますように。

本来は、肉厚の孟宗竹を使った方が具合が良いみたいだが、今回使ったのは肉薄の真竹だった。
なんとお米に火が通る前に周りの竹が燃えてしまったが、これもやってみて分かる知恵。次に生かせば良い。
それでも、竹筒を割ってみると、見事に炊き上がった五目ご飯が。
あつあつのご飯を、いただきます。

お腹が満たされたところで、コーヒーブレイク。
ログトーチはこんな場面でも大活躍。
お湯を沸かして、コーヒーを入れる。
ちょっとしたグランピングの感じ。気の置けない友達を誘って、こんな空間で気軽に楽しみたいねって話も盛り上がる。

デイキャンプ場所の横に流れる「女川」は二級河川。
すぐに降りることができる澄んだこの川は、女川町の水道水源にもなっている清流だ。
子どものくるぶしまでくらいの水量なので、安心して遊ばせることができるのが嬉しい。
水があれば触りたくなるのが子ども心。すぐに皆、川探検を始めた。夏になれば、とても気持ちよさそう。

爽やかな香りのミントティーが現れた。
このミントは、清水地区に自生しているのを、摘んできてネイチャーガイド協会の青砥さんがご披露。
女川の地元民の人たちの色んな引き出しは、実に魅力的。

最後に焚火の中に入れておいた焼き芋が完成した。
割ってみると、期待通りホクホク。
火を使って、じっくり時間をかけないと出せない食感と甘味だ。
子どもの笑顔に嘘はない。

片付けは、ご飯を食べ終わった後に行った方てしまおう。
遊び疲れて、子ども達の集中力が切れてしまう前に。
みんなで協力してやれば、あっという間に終わってしまう。

片付けが終わったら、子ども達の遊びの時間。
大人達も、思い思いの時間を過ごす。
こういう合間に話したことや感じたことが、それぞれの中に積み重なっていく。
机で学ぶことのできない素敵な時間だと感じる。

女川にはこういう知恵を持った人たちが活動している。
今回の指南役、女川ネイチャーガイド協会のお二人。
色んな道具と技を繰り出していただき、ありがとうございました!
子どもも大人も、次回の女川デイキャンプが今から待ち遠しくなった。