待ちに待った復幸祭当日。ONAGAWA daysとして、初の出店となるカフェ。学生さんを含むボランティアのみなさんと、設営していく。ドリルを取り出して、手際よく木箱と板を留めていく。カウンターや飾り棚、ベンチがどんどん完成。あとは、お客様が来るのを待つのみ。他の店舗の設営も、どんどん進んでいく。辺りに、少しずつ美味しい匂いが立ち込め始める。

毎年恒例となった津波伝承 女川復幸男も、今年で4回目。去年とはまた違うコースに、続々とランナーたちと応援する人たちが集まってくる。今年は、勾配がきつそうだ。試しに走っているランナーたちが口々に、キツイ、と漏らす。
「逃げろー!!」スタートの号令だ。一気に駆け上がってくる。最初の急カーブで転倒者が出ないかと、ハラハラ。先頭集団が駆け抜けた後、ぞろぞろとランナーたちが走ってくる。所属しているチームのユニホームだったり、コスプレだったり、ゆるキャラだったりと様々。観ている方も、すっかり笑顔に。連覇だ、と声が聞こえてきて、去年と同じランナーが優勝したことを知る。コースが変わっても連覇とは、すごい。確か、千葉県の方だったと思い出す。

女川フューチャーセンター前の特設ステージでは、開会式。町長をはじめとする町の関係者の挨拶の時間。全員がユーモアを交えて、しかも次の人にきちんとかぶせてくる辺りに、女川らしさを感じてしまう。女川人は、笑うのが好き。一緒に、仲間として笑ってくれる人も好き。そんな気がする。

特設ステージでは、パフォーマンスが一日を通して行われる。地元の和太鼓のグループ、しっとりとした演歌から盛り上がる人気のアニソンまで、趣味趣向を凝らしたパフォーマンスの数々。幅広い歌手たちが、熱く盛り上げる。人気テレビ番組のMCによるトークショーが一番盛り上がりを見せる。遠く離れた土地と女川が、しっかりと繋がっている。

シーパルピアへ渡ると、目移りするような数の出店。美味しそうな作りたての食べ物や女川のおみやげに出迎えられる。ぶらぶらと歩き、それぞれのブースにいる人たちとの会話も弾む。女川名物の大好物を見つけたり、新しい発見があったり。

今年の大きな目玉のひとつが、スラックラインのパフォーマンス。スラックラインとは、二点間に張り渡した専用のベルト上を飛んだり跳ねたりする新しいスポーツ。ヨーロッパやアメリカで盛り上がりを見せている。女子世界チャンピオンと男子日本ランキング3位の二人が参加。10cm幅ほどの伸縮性のあるベルトの上を、跳ぶ。その華麗でかっこ良すぎる姿に、うっとり。息を呑み、誰もが釘付け。空中で回転したり飛び跳ねたり、大技をあまりにも軽々とやってのけるので、できちゃうのではないかと勘違いするほど。観客から募集して、何名かがチャレンジ。グラグラするのを見て、プロとの差をまざまざと見せつけられる。

ONAGA-1(おながわん)フェスタも、今年の目玉の一つ。面白いと感じてこのプロジェクトに参加した女川、石巻、仙台の飲食店が、女川の食材で新しいメニューを開発して披露する、という趣旨。どれもアイディアいっぱいのメニューばかり。見るからにおいしそうで、選びきれない。その横では、恒例のサンマ炭火焼きのふるまい。美味しい匂いが充満しているエリアだ。

キッズエリアには、なんとペンギンが。一日を通して3回、シーパルピアでウォーキングを披露。そのヨチヨチ歩く姿に、子どもたちは大喜び。ブースの中には小さなプールがあり、ヒトデや魚とふれあうコーナーも。どじょう釣りのコーナーも人気で、ビニール袋に入ったどじょうを連れて帰る親子の姿も。

女川町まちなか交流館の前の大きなステージでは、地元の若手アーティストたちや、様々なライブパフォーマンスを開催。女川のゆるキャラ【シーパルちゃん】も参加したフラッシュモブには、観客から大きな拍手が。

駅前商業エリアを探検するには、スタンプラリーがピッタリ。集めたスタンプに応じて、女川の思い出になるような商品をゲットできる。これもまた、色々な店舗を知ってもらうキッカケとなる楽しいコンテンツ。性別年齢問わず参加でき、色々な商店と距離を縮める素敵なチャンス。

閉会式は、突然に。女川フューチャーセンターの特設ステージで、告知されていた時間よりも前に始まると気づいたメディア関係者は大慌て。無数のカメラマンが、ステージ目指して走っていく。周りも臨機応変に対応してね、という雰囲気にも女川らしさを感じてしまう。一通りの挨拶の後、恒例の餅まき。ステージから投げられた餅が、宙を舞う。撒く人も、受け取る人も、大きな笑顔。

ONAGAWA daysにこれまで登場してくれた面々も、会場のいたるところで遭遇。話すのはたった数分でも、そのにこやかで晴れやかな笑顔に、こちらが幸せな気持ちいっぱいに。女川に、たくさんの人たちが来てくれて嬉しい、町の人たちが楽しんでくれていて嬉しい。その表情やしぐさから、伝わってくる。

無事閉会し、片付けの時間。切り替えと実行のスピードは、圧巻そのもの。あっという間に綺麗になってしまい、夢だったのかしらと思うほど。テキパキと進め、終了。

最後に、円陣を組んだ実行委員会。町長の姿もある。委員長の淳さんの声が響く。それをじっと聞いている委員会のメンバー。遠目に見ていて、素直にグッと来る。あそこにある絆は、本物だ。それが、ビシビシと伝わってくる。何ヶ月もかけて、自らの時間を削り、連日連夜集まり企画した実行委員会。そして、円陣の中にはいないけれど、連携している行政や店舗の方々の顔も浮かぶ。彼らを突き動かすのは、女川への愛。互いへの愛。

一枚お願い!と言われて撮った写真。満面の笑み。会心の笑顔。みなさま、ほんとうにお疲れ様です。

THE DAY AFTER

ぐっすり眠った次の日。爽やかな快晴、絶好の海日和。キラキラとした女川湾目指して、ホテルから向かう。事前に予約しておいた女川湾周遊クルーズに参加。うみねこの餌付け体験付き、というのにワクワクする。船を出すと、徐々にうみねこたちが、船を追うように飛び交い始める。かっぱえびせんを差し出すと、すーっと降りてきて、ぱくり。急接近と至近距離に、ドキドキする。

周遊クルーズのもう一つのオススメは、2011年の大震災の体験談。もっちーこと持田船長が淡々と、時に生々しく、震災当日とその後のことを語ってくれる。写真もアルバムに納められているけれど、語ったことの一つ一つが、聞いただけでは信じられないような光景ばかりで、写真の記憶が塗り替えられるほど。言葉が残したイメージは強烈。船長が指差した島、それを波が乗り越えていきました、と言われて一同騒然&絶句。単なる観光クルーズではないところが、一番の魅力であり、女川に来たら体験すべき海の時間だと痛感する。

ランチは、数日前から心に決めていた場所へ。駅前商業エリアにオープンしたばかりの中華料理店の金華楼。女川の春の風物詩、海藻たっぷりラーメンをいただく。待ちに待ったこの味と食感が、たまらない。仲間とカレーラーメンやら、餃子やらを頼んで、大満足。開店前に到着して並んで、大正解。あっという間に席は埋まり、長蛇の列に。さすが人気店。

お腹いっぱいになったところで、あがいんステーションへ。すっかり我が家の食卓の定番になった女川土産や、販売開始したばかりのおかせいオリジナルのマスキングテープを購入。シーパルピアを歩いて、セラミカ工房のセラちゃんミカちゃんマステと、女川限定のmtマステもそれぞれゲット。

マザーポートコーヒーでエスプレッソを頼んで、一息。店の外のベンチに座って、リラックス。風も強くない日は、ぽかぽかとひなたぼっこしていたいスポット。こうして緩む時間も大切にしたい。広々したシーパルピアを歩きながら、車を停めていた駐車場へ向かう。

今日は、ドライブ日和。青々とした海を見ながら、石巻へ向かう。途中、絶景ポイントで止り、ぱしゃり。その美しさに、もっと佇んでいたいと思ってしまう。空のスカイブルーと海のコバルトブルーが、眼と心に刺さる。

ほっこり時間を、はまぐり堂で。まるで昔のおばあちゃんの家に帰ってきたような空間に、ついつい長居したくなる。ぬくもりのある和の家。差し込んでくる太陽。手作りのスイーツ。健康になりそうなランチプレート。どれも、あったかい。

ギャラリースペースのショップに、また新しい商品が増えている。ひとつひとつ手にとって確かめられるのは、うれしい。一組のご夫婦が並んで座り、海を見ている。キラキラと輝く青い海と、何も話さないけれど繋がっている二人の背中に心あたたまる。ここは、やはり時間の流れが違う気がする。だから、何度でも訪れたくなるのだ。

復幸祭から始まった女川ウィークエンド・エクスペリエンス。
またしても、忘れられない想い出がひとつ誕生。