ものづくりに関わる日々。

生まれは岩手県の岩泉町。二歳の時に女川へやってきた鳴美さん。それからはずっと、女川暮らしを続けている。三人のお子さんの子育てが一段落してからは、ものづくりに関わるお仕事を再開。電力会社のカルチャー教室でステンシルや七宝焼き、シルバーアクセサリーなどの指導をしたり、フラワーアレンジメント、ラッピング、ステンドグラスなどの教室に通って仲間と楽しむ日々だった。最も長く続いた陶芸はサークルを立ち上げ、仲間と一緒に震災まで13年間活動した。

「ものづくりが好きであれこれやってはいましたが、どれも中途半端な気がしていました。」そんな時、2011年の津波ですべての作品が流されてしまう。半年ほどして気持ちも落ち着いてきたころ、震災前に仲間とやってきた楽しいことに取り組みたいと思い始め、陶芸を再開したいと思った鳴美さん。仮設住宅完成のイベントで陶芸教室をやってみないか、と誘われた。ご縁に恵まれて窯も寄付されることになり、さぁ陶芸を再開というときに、新しい出会いが鳴美さんの元に舞い込んだ。

運命の出会いと旅。

震災後のまちづくりを考えるなかで、地形的にも似ているスペインとの異文化交流をはじめようと…話が持ち上がり、伝統的な文化である「スペインタイル」を紹介された。カラフルなスペインタイル。ものづくりが好きな鳴美さんは、興味を持った。まずは、東京へ。2012年の1月と2月は、レッスンに通った。そこで終わること無く、スペインでの研修旅行に勇気を出して行くことに。奇しくも、女川を出発した日は3月11日。運命としかいいようがなかった、と鳴美さん。

スペインのバレンシア郊外やマドリードで出会ったのは、明るくて綺麗なタイルで彩られた町並みだった。クラシックなモチーフから、ユニークで笑えるようなものまで様々。何百年も前のタイルがまだ残っていたのを見て、作り手と時空を超えて繋がった感覚が刺激となった。「町を彩るために使いたい。復興の証として、後世まで残したい。」帰国するころには、その想いがはっきりと鳴美さんの中で芽生えたのだそうだ。

町を彩るタイル工房、誕生。

想いだけ突っ走れば叶うかもしれない!と工房をオープンし、東京のレッスン中に作ったタイルを店先に並べてみた。すぐに、わたしもつくってみたい!という声が町の女性からあがった。マグネットを販売したり、鳴美さんが作った表札を並べてみたら、住宅や町内の宿泊施設や店舗の表札の依頼が来たりと、どんどん広がっていった。デザイナーに協力してもらいオリジナルデザインを開発し、切り取ってモチーフにしていった。

立ち上げ当初は全員初心者だった工房のスタッフも、3年の経験を経ていまでは立派なプロフェッショナル。それぞれが独立して工房を持ってもらいたいというのが鳴美さんの夢なのだそう。「スペインタイルは、欠けたり割れたりするかもしれないけれど、色はずっと鮮やかなまま。」そう笑う鳴美さんの顔を見て、女川を重ねあわせた。形あるものは、壊れてしまったけれど、少しずつ、色鮮やかな文化が戻りつつある女川。そんな町で、新しいスタイルの「女川タイル」が誕生する日が待ち遠しいかぎり。

近い将来は、色々なメニューのカルチャー教室ができる場所をつくり、それぞれの作品を販売できるようなボックスを設けたり、学生などを巻き込みながらタイルのデザインコンテストをやりたいそう。可能性は無限大。どんどんひろがる、カラフルな夢。

GO, SEE DO!
やってみよう!スペインタイル絵付け体験

7.5センチ角のコースターを制作。
デザインは、15種類位の中から選べる。色も、自由。
絵付け後2〜3週間で焼き上げ、発送される。

塗っている時の色と仕上がり時の色味のイメージが異なるため、カラフルでつやつやぷっくりなタイルが、手元に届くのが待ち遠しくなる体験。

事前予約をお忘れなく!

所要時間:1〜1.5時間
料金: 2500円 (税別)
☆事前予約必須 TEL:0225-98-7866

店主の阿部鳴美さん

女川の想い出にぜひ!ぷっくりとカラフルなタイルは、おみやげにぴったりです。ゆったりできるときは、タイルの絵付けがオススメ。工房で絵付けをし、窯で焼いた後、郵送で届きます。大小のサイズでオリジナルタイルのオーダーも承ります。女川でお待ちしています!